2021年9月4日(土) 岐阜市神田町 洋食屋パノニカ
・せーまんどーまん<マツダカズヒコg+木全摩子ds>
・柳川芳命alone(as)
コロナウイルスの影響で緊急事態宣言等が各県で出され、そういった状況を考慮したMeg Mazakiさんが出演を見合わせたため、「After It’s Gone」は柳川のソロとなった。
<柳川のソロ><せーまんどーまん><合同セッション(トリオ)>というメニューで、20時閉店に合わせてステージを組んだ。
この日、摩子さんのドラムスクール関係でエレキギターを演奏する中学1年生男子とそのご両親がお客さんとして来られた。おそらくこういう自由即興の音楽を聴くのは初めてだろう。期待していた音楽が演奏されず、何とも訳の分からない演奏を聴かされるのは苦痛だったろう。しかもチャージまで払って・・・。特に、アルトサックスの無伴奏ソロなどという普通にない演奏形態で、思いつくまま自由気ままに20分吹奏するのを聴くのは期待外れではないか?などということを気にしながら演奏していると葛藤に満ち溢れた即興演奏になる。
しかし、考えようによっては、そういう状況にあって戸惑いながら演奏するのも即興であり、そのことは演奏の質が下がるのではなく、演奏の質が変わるのだ、と思えばいいことかもしれない。迷いの中での演奏だったが、サウンド的にはまずまず満足のいく音色が出たので、それで良しとしよう。
<せーまんどーまん>の二人とは、それぞれ自分との共演も多いので、この二人のデュオだとどうなるかな?と興味深く聴いていた。二人がそれぞれ自分のスタイルで疾走し始め、ときおり立ち止まって、お互い向き合って何やら応酬し合い、またそれぞれ緩急を凝らしながら疾走していく。それは聴いてとても爽快だったしドライブ感もあった。マツダ氏が途中でギターをやめて、昔懐かしい「オタマトーン」を演奏したのは快挙だった。オタマトーン恐るべし!である。
さて、この日のお客さんの中で、先に述べた中学1年生の男子のことがとても心に残っている。とても魅力的な雰囲気を醸し出している神秘的な少年であった。ギター演奏ではエリッククラプトンとかリッチーブラックモアのコピーなどをしているという。クリームとかディープパープルと言えば60年代末から70年代前半が全盛期である。今から約50年ほど前のことだ。自分も学生バンドで「サンシャインラブ」だの「ホワイトルーム」だの「ハイウェイスター」だの、嬉々として演奏していた覚えがある。現在13歳の中学1年生が50年前の音楽を演奏していることになる。これを自分に置き換えるなら、自分が13歳の頃(1969年、昭和44年)の50年前と言えば、大正時代である。果たして中1の頃の自分は、大正時代の音楽(西洋音楽も含め)をやってみる気になっただろうか・・・?
クリームやディープパープルと言ったロックの古典を演奏するのも悪くないことだが、時代の最先端のギター演奏にも触れて欲しいものである。灰野敬二さんや大友良英さんや内橋和久さんの演奏を中学生が生では聴くのは難しいが、マツダカズヒコ氏の演奏をこの日に聴けたことは、大きな刻印が彼の脳裏に刻まれたのではないだろうか。彼が何年か経って「そういえば中1の頃パノニカという店で奇妙なギター演奏を聴いたな・・・ああいう自由な演奏を自分もやってみたいな」と思えばしめたものである。

この写真撮影は中嶋さんかな?いつもありがとうございます。