Report:2021年10月の演奏会

先月末に左足の親指にひびの入る怪我をした為、鈴木泰徳さん企画の「即興の森」(梅田オールウェイズ)、あかぎしほさんとのデュオ(大阪SATONE)、フリーフォームジャム(岐阜パノニカ)は残念ながら出演ならず。

■10月8日(金) 今池バレンタインドライブ

約2年ぶりの顔合わせ。宮本さんの体調が良くなったと思ったら、自分は足のケガでベストコンディションでは臨めなかった。しかし、内容は充実していたと思う。

1)宮本隆(b)+柳川(as)

2)マツダカズヒコ(g)+宮本隆(b)+木全摩子(ds)

3)木全摩子+柳川

4)マツダカズヒコ+木全摩子<せーまんどーまん>

5)宮本隆+マツダカズヒコ+柳川芳命

6)全員

という流れで、短めのセットをいくつか組んだのは、長時間の演奏に足が耐えうるかどうか懸念していたためであるが、最後の全員でのカルテットは、長年やっているユニットのような阿吽の呼吸の全即興だった。初めからこういう風にやればよかったかな、と思ったが、それまでの色々な組み合わせのセットがあったからこその集大成的カルテットだったのかとも思う。このカルテットでの演奏の録音、公開するに値する出来だった。

■10月22日(金) 日本天狗党 中部~関西3デイズ 

今年は、インテルサットをツアー初日にして野道幸次さんとのデュオ「晩譚」が対バンで出演

日本天狗党の結成時期と、インテルサットの開店時期はほぼ同じ。どちらもまもなく50年になる。こういう老舗の店で、70年代半ばから活動してきたフリージャズユニットの演奏を聴いてもらえるのは嬉しいことだ。自分は天狗党の演奏を77年あたりから渋谷プルチネラで聴いてきて、長野県上田市のR山荘での合宿にも参加してきた。40年以上関わらせてもらってきたわけである。改めてオリジナリティーあるサウンドを、ぶれることなく確固として築き上げてきているのには驚嘆する。

「晩譚」で野道さんとデュオをやるのは久しぶりだが、相手の音に合わせているようで合ってなく、合わせてないようで合っている不思議な関係性のデュオである。お互いの自立心と協調性の混ざり具合が絶妙なのだろう。とても素直にやっているとこういうデュオになるのだと思う。

■10月23日(土)2日目は「放心団」「柳川+中島直樹+Meg Mazaki」の2バンドの演奏と、日本天狗党の3本立てで、京都のアニーズカフェで開催。「放心団」のミステリアスなサウンド空間は注目すべきである。おそらくライブのたびに異なる表情をみせることだろう。今、関西で一番気にしてほしいユニットだと思う。

続いて中島直樹さん、Megさんとのトリオ。このトリオは天狗党の中部・関西でのツアーでは何度も対バンで出演している。中島直樹さんのセンスの良さのおかげで、このトリオの演奏はハズレがない。毎回充実感ある即興演奏が出来る。この日の録音も世に出しても恥ずかしくない内容である。

トリを務めた天狗党の約40分の圧巻のパフォーマンス。この日もノーマイクでライブを行うという一貫した姿勢をみせてくれた。今でも野外で公開演奏をしているという天狗党のストリートファイターの精神は心を打つ。

■10月24日(日) 最終日 酒游舘にて

富山の谷中秀治(contrabass)さん、滋賀の井上和徳(ts)さん、Megさんとのカルテットで自分は演奏。酒游舘というスペースで存分にダイナミックなパフォーマンスをやってもらおうと、名古屋から後藤宏光さん、タナカえんさん、Kaoruさん、月姫うさぎさんの異彩を放つ4人のパフォーマーを招き、いつでも、どこでも、誰とでも自由に演奏に関わってもらう。

今回のツアーで、富山の谷中さんを天狗党と引き合わせられたのは良かった。それぞれニューヨークでの滞在歴もあり(その時期はズレてはいたが)、そこでの体験が今の演奏に大きく影響している点では共通する。きっと共感するものがあるだろうと思った。天狗党の演奏の爆発力は、酒游舘の音響でこそ最大の魅力を発する。聴いていて陶酔感が得られる。

さて、この4人のパフォーマー。人間関係は出来あがっているとはいえ、4人が同時にステージに立つことはめったにないことである。初めてかもしれない。1×4が4にとどまらないエネルギーが酒游舘に満ち溢れた。ひと口に身体表現といえども、4者4様の志向性があることもよくわかったし、それが同時進行すると、このような狂乱の空間が生まれるのかと圧倒された。

我々、井上・柳川・谷中・Megのカルテットは、3つのパートに分け、いろいろなデュオのパートを作った。サックスとドラムのデュオでは、Megさんの粗削りながら相手の呼吸に繊細に、鋭敏に絡むドラミングがj光っていた。井上さんのブローは回を増すごとにアクティブに共演者に切り込んでいく。

谷中さんのコントラバスは、知らず知らずのうちにホーン奏者のエモーションを挑発し、その気にさせ、気づいた時にはその掌に乗せられて吹いている、という感覚になる。「ひとたらし」のプレイであるなあ・・・。

■10月29日(金)蠍座二人組(ゲスト:PUYO)

摩子さんの手書きフライヤーにあるように、蠍座の性格は「真面目に力強く目的に向かって真っすぐ進む。パフォーマンスは派手ではないが心の内にパッションを秘めて、一度目標を定めたらどんなことがってもひるむ事なく・・・」そうである。いささか買い被りの感もあるが、秘めたる情熱がパフォーマンスで醸し出されているなら嬉しいことである。

さて、この日は数日前からソプラノサックス1本でやろうという思いがって、そうしたわけであるが、このサックスは亡くなった鶴田哲也さんの遺品を奥様の杉山和こさんから譲り受けたものである。あまりライブで吹いていないのは、楽器としても、持ち主だった鶴田さんにしても残念なことだろうと思い立ち、いっそのことアルトから離れてソプラノ1本でやっていこうか・・ということも真剣に考えた。そうなるかどうか先の自分のことはわからない。最後になんやの店主PUYOさんにアルトサックスで入ってもらってトリオでやったが、普段はアルト同士での共演が、アルト+ソプラノとなり、音色の違い、音域の違いが良いコントラストになった。

下の写真を見ると、PUYOさんとやっているときの摩子さんは、とてもにこやかで優しく、上の写真とはずいぶん違う。まあ、別にいいけど・・・(笑)

いつもライブレポートをフェイスブックに投稿してくれているPUYOさんの言葉を抜粋して拝借。(以下)

「この日は、柳川さんソプラノサックスで参戦。音が鋭くてとっても良い。展開力もいいなあ。木全さんは、場面の切り替えがいい。スコスコっと変わって小気味よかった。最後に私も参加。久しぶりの完全即興で楽しくおもしろかった。」