Report : 晩譚@なんや

2022年2月15日(火) 名古屋 御器所 なんや

・晩譚(ばんたん)<野道幸次(ts) 柳川芳命(as)>

不穏なコロナ感染拡大が始まった頃、惜しまれて閉店した今池「海月の詩」での二人の演奏をアルバムでリリースしたのが2020年5月。以来、ときどき『晩譚』と言う名前で数回演奏してきた。テナーサックスとアルトサックスのデュオという、コンセントが無いところでも、一畳のスペースがあればどこでも演奏できるシンプルな楽団である。

形態がシンプルであればあるほど、演奏者のすべてが剝き出しになる。全即興であればなおさらである。肉体(内臓)と直結しないと音の出ない管楽器であればなおさらである。

反応し合うとか、協調し合うとか、忖度し合うとかいう関係性でデュオをやるのはやめて、徹底的にその場の判断で自由に演奏をしてみようと自分はやっているし、おそらく野道さんも同じスタンスで吹いているだろうと思う。サックスという単音の旋律楽器同士で同時に即興演奏をやると、キーが合って無くて気持ち悪いこともあるが、その気持ち悪さが気持ち良いこともある。

しかし、同じ空間、同じ時間に二人が演奏していれば、共鳴してくるのは自然である。その自然にあえて逆らうのは不自然なことで、素直にやればいいのである。そこに人となりが滲み出るのだから。

今回の二重奏は、(聴こうとしなくても聴こえてくる)相方の音と合ってなくても気にしない、偶然のように合ったときには、同調し続けるか破調を目指すか、その選択も自由、という関わり合いだった気がする。時には「美しく」はハモりたいと思えば、そうすればいい。即興はそのときの気持ちの在りようが音に反映することに面白さがある。

あとで録音を聴き返してみると、演奏中に感じたときよりも「美しく」調和している場面が多かった。やはり表向きはズレていても、地下の水脈ではつながっていて、しっかり向き合っているものかな、と思った。お互い大人になったせいか?

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