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R-O-W project 第2作デジタルアルバムでリリース

4月に野々山玲子(ds) さん、臼井康浩(gt)さんと3人で始めたこのプロジェクトですが、こちらからの声掛けで参加者を増やして、いろいろ変化のある作品づくりをしようとプロジェクト第2弾に取り組み、このたびデジタルアルバムにしました。

このプロジェクトに参加してもらうためには、(原則)自宅で録音できることが条件になります。ミキシングやマスタリングなどの先々の作業のためには、44.1KHz、24bitのWAVでの録音が求められます。あとは送られる音楽データを受信し、それを再生しながら演奏・録音ができ、その録音を野々山さんに送信できればOKです。しかし何と言っても、こういった個々の演奏をオーバーダビングして作品を作るということに興味があることが大前提です。メンバーの相互作用で集団即興を練り上げていくライブとは違うので、こういうやりかたで即興演奏の作品を作ることを邪道と考える方もいると思います。自分に関して言えば、コロナウィルスの影響でライブが出来なくなった、スタジオにも入れず自宅で楽器をいじっていなければいけないという状況下に追い込まれたために始めたわけで、そういう状況に置かれなければ、こういう手法での音楽制作は考えてもみなかったと思います。

さて今回は、上記のスターティングメンバーの3人に加え、ラジオの直江実樹さん、ピアノの奥村俊彦さんに加わってもらい、5人でいろいろな編成でリレー式に多重録音をして4曲作りました。各曲のメンバー編成(トリオまたはカルテット)と、どういう順番で音を重ねていくかというオーバーダビングの流れは、レーベル主の野々山さんに決めてもらいました。直江さんのように、なかなかお会いできない遠方に住んでおられる方とも一緒にできるのもこのプロジェクトの魅力です。また、スターティングメンバーの3人が管・弦・打と揃っているので、できればそれ以外の楽器ということで入ってもらった奥村さんのピアノは、第1作に無かった色彩を与えてくれました。(各曲のメンバーの組み合わせを工夫すれば、今後ギタリストやサックス奏者が加わってもいいと思います。)

というわけで、6月1日リリースでBandcampにアップしました。有料でも無料でも聴けますのでどうぞ。そして、加わってみたいと思われる方はどうぞ気楽にお申し出ください。

https://reikononoyama.bandcamp.com/releases?fbclid=IwAR2K9nu02AraFJF9R50uKPGIXqtjSYjL6PZSWNmtV9mSCkckaqwN4bgtiMA

ROW 2

Review:『即興の森2020』@梅田ALWAYS

2020年5月31日  大阪・梅田 梅田ALWAYS 『~迷い込め~即興の森 2020』

山嶋真由美・小柳淳子・宮藤晃妃・杉山千絵・ 山添ゆか/vocal
島嵜隆太/beatboxer     Charhan/performancer     奈倉翔/violin
市瀬由紀/flute     登敬三・柳川芳命・里村稔/sax
高田亮介/guitar     名倉学・小場真由美・荒田健司/piano
山本久生・佐々木善暁/bass     鈴木泰徳/drums

昨年に引き続き、主宰の鈴木泰徳さんの計らいで2度目の参加をさせてもらった。出演者は昨年と一部変わっているようだが、顔馴染みの人も出来て今年は幾分リラックスして臨めた。くじ引きによって今年はピアノ・キーボード奏者の名倉学さんと共演。初共演どころか初対面で25分間の枠の中でいきなり即興演奏を行う。

お互いに普段どんな演奏をしているのかという予備知識が無い中で、一緒に音を重ね合うというのは緊張感もあるが、そういう状況下で自分に何が出来るのかを試せる期待感もある。空中分解する不安は無い。それは楽器をちゃんと制御できる人とやるからで、音で何らかの意思交換が出来るはずだと信じているからである。(ただし誤解はつきものだが・・・)

単音旋律楽器のサックスは、音を繋げれば旋律になる。運指によっては調性が感じられる音楽になる。ピアノも旋律が弾ける楽器であるので、それぞれの旋律の重なり方によっては不快で違和感のある音楽になってしまう。自分はフリーフォームでやってきたので、感覚がマヒしていて不快も違和感もあまり感じないほうだが、すべての人がそうであろうはずがない。自分もときには明らかにこのズレ方はおかしい、よくない、気持ち悪い、と思うこともある。

ところが名倉さんは、サックスがどんな旋律を出そうがそれを受け止めてピアノの音を重ねてくれる。聴いてくださっていた方はどう感じたかわからないが、自分の感覚でいえば「合っていた」と思っている。まあ、オーネットコールマンとかドルフィーのようなジャズを聴いてきたので、たとえ調から外れている音が出ても美しいハーモニーと思ってしまうのだが・・・。あとでライブ配信された動画を見ると、名倉さんはほとんど目をつぶって吹いている自分のほうを見ながらピアノを弾いておられる場面がよくあり、ああ、私の好き勝手な吹奏を誠意をもって受け止めてくださったんだな、と思った。

そういうわけで気持ち良く調子に乗って吹いていたのだが、20分程して名倉さんのほうから『もう終わりましょうよ』という明確な意思のフレーズが出されたので、瞬時に『ここで一緒に終わらないと泥沼のように演奏が続き、終われなくなる』と判断し、一緒にエンディングを迎えることができた。それは聴いていた方々にも明確にわかったようで、即座に拍手と歓声が聴こえた。演者・観者ともに『無事に着地出来て良かったな』という安堵を共有できたのであろう。この素晴らしい一体感。

さすがジャズで磨き上げたインプロバイザーたちである。これは譜面があるか事前に打ち合わせをしたのではないか?と思えるようなデュオも聴かれ、ジャズという共通言語をマスターすればこのような技ができるのかと感心した。ジャズとあまり縁がなくジャズをまともに演奏できない自分も仲間に入れてもらえているようで楽しく過ごせた。

鈴木泰徳さん、今年もありがとうございました。下の写真は、前田祥治さん撮影のを拝借しました。感謝!

プレゼンテーション2

Review:OTOMAI@酒游舘

2020年5月30日 滋賀・近江八幡 サケデリックスペース酒游舘

・蛇香<千馬木/ds    Yuma/vo,dance   古川真穂/vo,gt     牧瀬敏/per>

・今貂子/舞踏     柳川芳命/as    Meg Mazaki/ds,per

約二か月ぶりの演奏会である。このイベントを酒游舘で実施しようと目論んだのは幸運だった。木造酒蔵の構造、バレーボールコートほどある収容人数120人というスペースは三密を回避できる。

ユニット<蛇香>による無国籍でグローバルなダンスと音楽のミクスチャーは、これまでの自粛期間の「もや」を吹き飛ばすような生命感に溢れていた。<異なるもの>のように思える要素がブレンドされることによって、弁証法のように止揚された新たなものが生まれる。この発想、試み、編集が魅力的なショーだった。

今貂子さんと初共演する柳川+Meg Mazakiのデュオ<AFTER IT’S GONE>は、自粛期間中に20日間ほど行った<一日一作の自宅録音ソロのオーバーダビング作業>の成果を生かせたと思う。この試みにはライブのような即興の相互作用を期待することは出来ないが、

・相手から送られた音源を事前に聴かないでぶっつけ本番で音を被せ、録音のやり直しをせず一回性に徹することで即興性を可能な限り生かす。

・自宅で演奏・録音することの制約(Megさんはドラムセットを用いず、小物パーカッションなどで演奏)を逆に利用して、過剰に音を撒き散らさないで音数を精選し、音量も極力抑えたミニマルな表現を開拓する。

という趣旨で行った。特に後者の取り組みが今回のライブに生かせたと思う。とりわけMegさんの表現の幅がぐっと広がった。

今貂子さんが登場すると、その存在だけで時空が支配され空気が一変する。<静>と<動>の交錯から生まれるダイナミズムや、身体の部分すべてを舞わせ魅せる舞踏は、観る者の緊張感と集中力を持続させ、一瞬たりとも目を離せなくなる。その動きから、即興演奏の次の展開に閃きと導きを与えていただき、40分間まったく緩むことなく演奏できた。

終わったときの22人のお客さんの温かい歓声に成就感が得られたイベントだった。お声をかけてくださった蛇香の千馬木さんには心から感謝したい。

下記の写真の蛇香とAFTER IT’S GONEのものはTeru Koikeさん撮影。今貂子さんが写っているものは辻村耕司さん撮影。

OTOMAI

 

シリーズAFTER IT’S GONEの第2作はデジタルアルバムにてリリース(5月23日)

Meg MazakiさんのFacebook記事より引用させていただきます。

柳川芳命さんとめぐのデュオシリーズ第3期 ’After It’s Gone’ の、自粛要請期間中につくったデュオ作品集です。
演奏会の中止延期が相次ぐ中、デュオとして何が出来るか考えました。スタジオに入ることはままなりませんし、自宅では生ドラムの演奏を満足には出来ません。そこで、手に入れたばかりの中谷達也さん作成のパーカッション弓を練習すると共に、パーカッション、小物、身の回りにあるものだけで、どれだけあらわせるかの実験をしようと思いました。「ドラムセットを封印した上で、何ができるか」を、作品を作る際のマイルールとしました。
柳川さん先行、めぐ先行と1日おきにソロを録音し、相方に送る。そのソロを聴きながら演奏、録音。(必ず初聴で。)それらを柳川さんにミックスしていただく。このプロセスを3週間、21日連続で行いました。その中で時系列に択んだものが、この4つのかたまりです。
新しい音を探す日々、決して飽きることはありませんでした。また、中谷さんの弓で、音の出そうなものはなんでも擦ってみました。思わぬ音が飛び出したり、まるで人間の声のように聞こえたり…。この有機的な試みもまた、刺激的なことでした。
いつもマスタリングをお願いしているNioさんが、生き生きとしたマスタリングを施してくださっています。今が旬の、作品集だと思います。聴いていただけましたら幸いです。(リンクにて試聴可能です。)

During this self-quarantine, Yanagawa-san and Meg wondered what we could do as a duo. These are the works we created during the period of staying at home.
We did it this way ; One recorded a solo tune and sent it to the other, who played listening to the solo and recorded it. We did it alternately for 21 days in a row. And Yanagawa-san mixed the two individual recordings.
Talking about Meg, the housing situation doesn’t allow her to play the drums at home, so Meg made it a rule to play the percussions and gadgets around her, mainly using the bow created by Mr. Tatsuya Nakatani, percussionist living in the U.S. It was kind of a challenge to explore new sounds without using a drum kit.
We have always been thinking about what we could do RIGHT NOW. In this sense, this quarantine gave us the opportunity to come up with such works.
We hope you enjoy these tunes.
Meg Mazaki

credits

released May 23, 2020

Production : Dual Burst
Mixing: Homei Yanagawa
Mastering: NIO
Photo: Meg Mazaki

AIG Ⅱジャケット

R-O-W Project<My Home Recording 自宅多重録音リレー式>よりデジタルアルバムリリース

2020年4月26日 Band Campにて野々山玲子さん、臼井康浩さん、柳川の3人による4つの音源をリリースしました。リリースに至るまでの経緯と、このR-O-W Projectについては、以下のとおりです。

2020年4月以降、新型コロナウイルス感染拡大防止のため緊急事態宣言が発せられ、ライブ会場での演奏会の実施が困難になってきました。現時点で5月6日までの演奏会はすべて中止になりました。5月6日以降も状況によってはこの状態が継続する可能性もあります。

こういった中でも出来る演奏活動は無いものだろうか?ということで、野々山玲子さんから、互いのソロ演奏を自宅で録音して、それを送り合って、相手のソロ演奏を聴いてそれに自分の演奏を重ねる(多重録音)ことをしてみてはどうだろうか?という提案がありました。もちろんその中においては、ライブのような互いの演奏に相互に反応し合っていくインタラクションはありません。なのでこれはセッションというよりは作品づくりであろうと思いました。

4月中旬に、自宅の防音室で録音した即興のアルトサックスソロを数曲野々山さんに送りました。その中から野々山さんが1曲選んで、それを聴きながら即興でドラム演奏をし、両者の音をオーバーダビングしたものを共有して試聴してみました。ライブ録音を聴きなれた自分には違和感が最初ありましたが、何度か聴いていくうち、ああ、こういう音楽もまた面白いかもしれない、という思いになってきました。次に、野々山さんから即興ドラムソロを送ってもらい、それを聴いてサックスを吹くということをやりました。できるだけ日頃の即興デュオに近い条件で吹奏しようと思い、録音は初聴、やり直し無しのワンテイクで録音して、野々山さんにミックスしてもらいました。こちらのほうは日頃やっている即興デュオに近いので、自分としては違和感は無かったです。しかし、野々山さんはどう感じたはわかりません。

もう一人加えて三重奏にしてはどうか、という気になって、自宅でギターの録音とかミキシング、マスタリングなどもやっている臼井さんに参加を呼びかけました。OKしてもらえたので、誰から順番に音を重ねていくかを考えました。3人でやる場合、その順番は6通りになります。6曲はちょっと大変だろうから、さしあたり4通りのパターンを選んで、順にオーバーダビングしていきました。

自分が一番に録音するときは無伴奏ソロです。演奏の方向を示すものでもありますが、あとの二人がどのような演奏で音をかぶせてくるか予想できません。そこに面白さがありました。最後に自分が録音する場合は、ライブでの即興トリオ演奏に近い感覚で演奏することになりますが、自分の演奏に対する反応は当然ありません。それは<無いものねだり>なのであきらめることにして、最終的に3つの演奏が重なるとどうなるだろうかということに期待を寄せました。

こうして、3人の演奏をミックスして仕上げに臼井さんにマスタリングしてもらった4曲がこれです。聴いていただき何かを感じていただければ幸いです。また、自分も参加してみたいという思いになられたらお声掛けください。このR-O-W Project<My Home Recording 自宅多重録音リレー式>は、野々山、臼井、柳川の3人を軸に、徐々に参加者が広がっていってもいいなと思っています。

ただ、「ライブこそが本来のあるべき即興演奏活動である」という思いは揺るぎませんので、あくまで<実験的な即興演奏のコラージュ作品づくり>と割り切っています。ライブが出来るような状況に戻れば、このProjectも変容していくと思われます。

https://reikononoyama.bandcamp.com/releases?fbclid=IwAR0KWwV5FfaAgEc11z1zi-wYnCkWM8FxgutWP_UeqZVgaWc4vADHWKAdN28

スクリーンショット (17)

 

 

Review: 野道幸次+柳川芳命@海月の詩

2020年3月28日(土) 名古屋・今池 海月の詩

・野道幸次(ts)      柳川芳命(as)

野道さんとは年に数回だが共演を継続している。「O3」から始まって「四夷」、「千円デュオ」、「烏合の徒」、あるいはイレギュラー編成の一過性ユニットなどで一緒に演ってきて、考えたらもう6年を超えている。にもかかわらず、近年やや乱発気味に音源をリリースしている自分だが、野道さんと共演した音源を一作も残していない。

今回、久しぶりにサックスデュオで共演するにあたり、世の中はかなり困難な状況にあった。新型コロナウイルスの影響でいくつかのライブが中止になり、この日(3月28日)東京では外出に対する自粛勧告もされていた。幸か不幸か自分の演奏会では、「密集」も「密接」も生じるほどお客さんが来るわけでもなく、いわゆる「ライブハウス」で起こっていることのイメージとはかけ離れているので、中止に踏み切るような判断には至っていない。

この日は無観客状態での演奏になることも十分想定されたので、これを機会に公開レコーディングをするというのはどうか、と思った。そうすれば無観客状態になったとしても、むなしさは無くなる。というわけで、録音を始めようと思ったときにお客さんが登場。初めは3人の方が来てくれ、後半にはもう一人この店常連のパフォーマンスのサイン加藤さんが来てくれた。めでたく合計4人のお客さんの前でレコーディングを始めた。

これまで野道さんとの「千円デュオ」では、30~40分切れ目なく吹き続けることが多かったが、録音物を聴く立場に立つとその尺は長すぎる。どんなに良い内容の演奏でも、聴いていて「まだ終わらないのか」「いつまで続くのか」と聴き手が思った瞬間に、その演奏は✖である。(と、個人的に思っている)なので、10~15分程度の尺の演奏を数テイク録ろう、ということだけ打ち合わせて、あとは一切打ち合わせをせずに始めた。

結果的に、前半のステージで3曲、後半のステージで3曲をやった。そういう場合、さっきやった曲調とは違うアプローチで次の曲をやろうとする心情はおのずと働くもので、野道さんも自分も6曲通しての構成をある程度意識して吹いたと思う。だが、それを口に出して伝え合うことはしなかった。しなかったというか、もうする必要などない域にふたりの関係は出来あがっていると思っている。

家に帰ってさっそく録音を聴いてみた。吹いているときは、それぞれが勝手に吹いていて散漫な感じではないか?と危惧したが、そのズレ加減、共鳴加減、同調加減、離反加減がよいバランスになっていた。それに、やわらかく流麗で優しい部分、機敏に畳みかけ合って猛る部分が良い感じでブレンドされていた。野道さんは、相手の演奏に安易に迎合したり相手の音をフォローしたりするようなことをしないので自由になれる。自分の出した音に追従されたり絡みつかれたりすると、その「しがらみ」から逃れようとすることで集中できなくなる。

サックスサウンドとしても、テナーとアルトそれぞれの持ち味が生きていたのではないかと思う。自分はちょっと前に中古で入手した吹奏楽やクラシックを目指す生徒ならまず間違いなく先生から薦められるフランスS社の定番マウスピース(オープニングも初任者おすすめのサイズ)を使った。それにそのマウスピースとの組み合わせで、これまた定番と言われるフランスのV社の3.5の硬さのリードを合わせてみた。やはり、定番は定番と言われるだけのことはあるな。これまでの自分の音とは違う音が出て新鮮な気分だった。

(ライブ中の写真は誰も撮っていなかったので、ゴーストVの黒田オーナー撮影のを無断で拝借し加工しました。)

野道ー柳川

 

Review:NOUS / MUK @Zac Baran old new

2020年3月19日(木) 京都・熊野神社 Zac Baran old new

・NOUS <柳川芳命/as 菊池行記/electronics 小林雅典/el-g>

・MUK <take-Bow/el-g   Kei-K/as  Meg Mazaki/ds>

NOUSとMUKの2つのバンドによる演奏会は、去る2月13日に名古屋の『海月の詩』ですでに行ったのだが、このときはNOUSの菊池さん(エレクトロニクス)が参加できず、NOUSマイナス1ということで、小林さんと柳川のデュオで出演した。今回は、NOUSフルメンバーでの出場である。昨年秋のバンド結成からまだ3回目の生演奏に対し、京都のMUKの3人はバンド歴は長い。

最初にNOUSが演奏する。菊池さんの機材(よくわからないが、ラップトップ、タブレット、小さいキーボード・・・)が、店のPAと相性が良いかどうかが結構重要なカギになる。何とかモノラルで対応し、十分な音量が保障できた。小林さんのギターがクリアでシャープな音色で切り込んでくるストラテジーに対し、菊池さんの電子音響は、周囲から水攻め、火責めで侵攻してくるストラテジーのように感じた。知らぬ間に音の渦に包囲されているような感じ。勿論それはときに逆転することもあり、小林さんがアンビエントに忍び寄り、菊池さんから意表を突くグロテスクな音塊が放射されることもある。サックスやギターの出せる音響が限界あるのに対して、エレクトロニクスの音響からは、無限(とまでは言えないかもしれないが)の音色のパレットが備わっているため、3人のアンサンブルも多様に七変化する面白さがある。

NOUS2

次に、交流セッションを2つ行う。一つ目はTake-BowさんとMegさんのデュオMUに、菊地さんが加わったトリオ。初顔合わせである。トータル25分程の演奏のうち、10分ほど経過したころに3人の音が接近戦になり、ボルテージが上がってストーム状態になる。エキサイティングなアンサンブルになった。

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二つ目は、小林さん、柳川、Take-Bowさんによる2ギター1サックスのトリオ。以前に小林さんとTake-Bowさんのデュオを聴いたが、大変面白い対局だったという印象がある。お互いに鋭い音で多彩な技を仕掛け合うのは、聴いていて飽きることなく知らぬまに惹きこまれていく。3人でやってみて大変満足いく演奏が出来たと思っている。約15分程の短めな演奏は、間延びすること無く、凝縮された音の絡み合いが終始持続した。

TakeBoe Kobayashi Yanagawa

 

最後にMUKが演奏。イントロダクションのアルトの鋭い咆哮が出だしからクライマックスを誘発する。Kei-Kさんのアルトの硬く、鋭く、明るい音色が冴えていたな。いろいろなサウンドシーンをTake-Bowさんのギターが創り出し、多彩なアンサンブルを導いていた。両者へのMegさんの対置、レスポンスの速さにしなやかさがあって、カオスの泥沼に落ち込むことなく、全体的に「美しさ」があった。いいバンドだと推したい。今のところ京都中心での活動だが、関東にも進出して欲しいものである。

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Review:After It’s Gone / 日本天狗党+時岡秀雄

■2020年3月14日(土) 東京・入谷 なってるハウス

・After I’ts Gone<柳川芳命as  Meg Mazaki ds>

・日本天狗党<赤木飛夫as  鈴木放屁ts  赤木憲一ds>

■2020年3月15日(日) 東京・阿佐ヶ谷 イエローヴィジョン

上記メンバーに時岡秀雄ts がゲスト出演

日本天狗党を秋に中部・関西に呼び、柳川+Megデュオが2~3月に東京に出向く、というパターンが定着しつつある。今年は新型コロナウイルス感染のパンデミック宣言直後に、なってるハウスとイエローヴィジョンで合同演奏会を行うことになった。勿論計画の時点では予測できなかった事態である。お客さんは集まるだろうかという不安は、別にこういった状況に関わらず我々のような音楽をやっている者にとっては慣れっこなので、特に気にはしなかった。しかし、意外にも両日とも7~8人のお客さんが集まってくれた。とくに14日は冷たい風の中雪混じりの雨が降り、真冬に舞い戻ったような天候だったにもかかわらず、である。つくづくありがたいことだと思った。

14日(土)なってるハウスにて

天狗党の昨今のパワーアップぶりが凄い。昔々、アルトの赤木さんが「俺たちも〇〇代になったら、いい演奏になると思う」と言っていたのを思い出した。〇〇には40が当てはまるのか50が当てはまるのか忘れてしまったが、60ではなかったはずである。しかし、60代になって(自分は20代の頃の日本天狗党からずっと聴いているのだが)、これまで以上の熱量が放出される演奏になるとは誰も予想しなかったろう。メンバー一人一人の音圧や切れ味がだんだん凄くなっていくなと思った。怪物バンドである。

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After It’s Goneは、柳川+Megデュオのシリーズで、Megさんの腰痛から復帰後の時期から始めた第3段階のものである。Hyperなデュオから始まり、RoughlyにHealするデュオ、その後は、二人の音の残響とか余韻とか間というものを意識した演奏にしようとは思っている。今回はNY在住のナカタニタツヤさん製作のパーカッション用の弓を手に入れたMegさんが、シンバルを擦るという試みも交え、静と動、弱と強、疎と密、緩と急・・・といういろいろな対比を織り交ぜることでデュオに奥行きと言うか立体感をもたせたいと思っている。果たして聴いてくださった人は、そういうものを感じ取れただろうか? 少しずつではあるが、手ごたえが蓄積されてきたと思うのだが・・・。

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この後、赤木憲一さんのドラムと柳川のデュオで始め、赤木飛夫さん、鈴木放屁さんのサックスが徐々に加わり3サックス1ドラムのセッションを行った。爽快である。いろいろなタイプやムードの集団即興があるが、やはりカタルシスを味わってもらえる演奏、琴線を刺激する演奏を自分はやっていきたい。勿論、多様さがあってこそのフリーインプロビゼーションなので、それを万人に押し付ける気は無い。こういう暑苦しい音楽、情緒に迫る音楽は嫌という人もいるであろう。それも受容したい。

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15日(日)イエローヴィジョンにて

この日は、テナーの時岡秀雄さんがゲスト参加。<日本天狗党+時岡秀雄>の演奏はもう何回か行われている。時岡さんと言えば、AーMusikのアルバムの中の1曲目「不屈の民」でアルトを吹いているが、何度繰り返してそれを聴いてもいっこうに飽きることがなく、聴くたびに高揚感が得られる。名演であると思っている。その後、吉野大作とプロスティチュートでのテナーもよく聴いた。これまで生で時岡さんの音を聴く機会が無かったが、この日ようやく聴け、共演もできた。感激である。

最初のステージは日本天狗党+時岡秀雄。3サックスの絡みは混沌としていながら、3者3様の音が明確に聴き分けられ、多彩なアクションペインティングを観るようで圧巻だった。

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続いて柳川+Megデュオ。昨日の今日ということもあり、予定調和にならないよう音の重ね方にひねりを加えてみた(つもり)。が、そういうアプローチをしても戸惑い無く、演奏はスムースに流れていく。こういうのは積み上げの成果とも言えるが、聴きに来てくれたテナーのY氏の感想にもあったように、「出来上がりすぎ感」もあるかもしれない。創造と破壊の繰り返しにターミナルは無いだろうなあ。

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最後に、デュオに時岡さんを交えてトリオで演奏。我々のデュオをずっと聴いた上での時岡さんのアプローチは、デュオには全く出てこないであろう意表を突くリズミックなフレーズでの切り込みだった。おかげでデュオのときとは色合いの違う演奏になった。さすがであるなあ・・・、引き出しが多い。脱帽である。

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Review:Samadhi@名古屋Casa de la Luna(スティーブン、Direct Opposite)

2020年3月9日(月)Stoo  Odom 2020 Japan Solo Tour in Nagoya

名古屋・庄内通 Casa de la Luna

・S.Shah スティーブン ソロ

・The Direct Opposite

・Samadhi <鈴木茂流el-b マツダカズヒコg 柳川芳命sax>

メインのStoo Odom(contrabass)さんが、体調不良のためツアーが中止となり、上記3つの出し物でこの日のイベントはが進行した。

このCasa de la Lunaという初めて演奏する店は、外観は普通の住宅である。ナビゲーションで住所を打ち込んでそれを頼りに向かったのだが、「まもなく目的地に到着です。案内を終了します。」とアナウンスされても、ライブハウスらしい建物は見当たらない。おそらくは、日暮れ前であれば見逃すような店である。防音設備はさほどされてなく、表の道路に面した1階なので、かなり外へ音が聴こえていると思われるが、曜日によってはドラムセットを使用してもトラブルは無いそうだ。周囲に空き家が多いからかもしれない。

入口のガラス戸を開けた時に思わず「ごめんください」と言いそうになる。室内にはいろいろなデコレーションはされているものの、造りは普通の家である。目を楽しませる物がいたるところに展示されていて、客席にはくつろげるソファーもある。演奏場所には靴を脱いで上がる。板の間にカーペットが敷かれたスペースに、アンプやPAスピーカーが置かれていている。座る、寝そべる、転がるなど随意にできる。高校生の頃、友達の家に楽器を持って集まって練習したときの思い出がよぎる。

最初に、スティーブンが生ギター、ボーカルで演奏。バックにインド風(?)の持続音が流れ、瞑想的、内観的、鎮静的な音世界に浸る。スティーブンさんの創る音楽は多彩であるなあ・・。この店の室内環境にふさわしく、くつろぎや安らぎを与えてくれた。

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続く、ダイレクト・オポジットは初めて聴くギター二重奏のユニットである。たぶん齢は息子ぐらいの若者であろう。電気ギターを使っていたがサウンドはアコースティック風で、歪み系ではなく透明感があり清涼で、これまた聴いていて安らぎが得られた。

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メインのストゥー・オドムさんのステージが無くなったので時間的なゆとりができ、結局サマーディがトリを務めることになる。個人的な反省なのだが、これまでの演奏とは趣の異なる演奏が自分は出来た気がする。違うと言われても聴いている人は気づかないだろうと思うが、自分の意識の流れと、演奏の展開のスピードがうまく一致したという実感があったのである。一つの演奏シーンを十分描き切ってから、次のシーンに移行していく展開だった。(これまでは、実際の演奏より自分の意識が先走っていて、一つのことをまだ喋り切っていないうちから次の言葉が浮かんできて、それを喋ってしまうようなところがあって、良くないなあと思うことが結構あった。今流れている時間に浸りきって演奏していない、という問題である。)なので、この日の演奏ではマツダさんのギター、鈴木さんのベースとの一体感を味わいながら(それを楽しみながら)吹奏できた気がする。

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要するに、落ち着いた精神状態で演奏できたのである。なぜそういう状態で演奏できたか?いろいろ考えてみたが、一つは演奏スペースの環境、3人の立ち位置(この日、自分はマツダ氏、鈴木氏より後方に立った。普段はサックスがギターアンプ、ベースアンプの位置より前方に立って吹くことばかりである。)二つ目は、自分たちの出番までの2つのバンドの演奏内容。勿論、こういう外面的な影響だけでなく内面的な要因もあったのだろう。しかし、それが何だったのかはよくわからない。

昔、福島のネガという店で金田さんというサックス奏者に呼ばれてデュオをやったことがある。90年代の初めの頃である。その金田さんは高木元輝さんと親しく、高木さんから音楽やサックスを学んでいる人だった。金田さんが近く柳川と共演することを高木さんに話したところ、高木さんが「柳川さんは演奏が速いからね、ゆっくり吹けばいいよ。」と金田さんに助言されたそうだ。確かに、あの頃は時間を詰めて詰めて、先走った演奏をしていたと思う。物理的なスピードのことではなく、意識のスピードのことである。

演奏中に流れている時間に、自分の意識の流れの速さチューニングするということが今の課題かなあ・・・。これは精神修養を要することだな。

 

 

Review:M☆A☆S☆H & After It’s Gone@酒游舘

2020年3月6日(金) 滋賀・近江八幡 サケデリックスペース酒游舘

・M☆A☆S☆H <大沼志朗ds 森順治as  雨宮拓pf>

・After It’s Gone <柳川芳命as Meg Mazaki ds>

セッション:松原臨 ss  井上和徳 ts  小松バラバラ voice

2013年の夏だった。横浜・白楽の「ビッチェズブリュー」にM☆A☆S☆H(マッシュ)が出演するということで、サックスを担いで旅行気分で聴きに行った。あわよくば1曲一緒に吹かせてもらおうという目論見だった。大沼さんとは96年に名古屋のKUKUでデュオでやらせてもらったことや、12年にはカルヴァドスの『地と図』でゲスト出演してもらった縁がある。森さんとは01年の日本天狗党の信州の合宿セッションで顔見知りだった。それもあってビッチェズブリューでは2ステージとも吹かせてもらい、こともあろうにギャラまでいただいた。「この金は俺たちを名古屋に呼ぶときの資金にしてくれ」と大沼さんに言われた。しかしながら、マッシュを名古屋に呼ぶことはなかなか出来ずじまいであった。

昨年4月に森順治さんを招いて岐阜、名古屋で演奏会を企画したとき、幸運にも雨宮さんも同行してもらえ、お二人と岐阜のゴーストV、名古屋のなんやと海月の詩で共演ができた。が、肝心のバンマス大沼さんを含めたバンドとしてのライブは実現できずにいた。いつか中部地方に来てもらえる機会を作りたいと考えていたら、マッシュとして西尾のインテルサットの周年記念ライブと大津TIOに出演という情報を得た。大津TIOはMegさんが企画するということで、対バンとして柳川+Megデュオで一緒に出させてもらえることになった次第である。

ところが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、TIOでは演奏できなくなったため、急遽場所を同じ滋賀県の酒游舘に移して、Megさんと私のデュオとの2メンで、さらに自由参加のセッション付きで開催することになった。

当日、まず柳川+Megデュオ(シリーズAfter I’ts Gone)が、オープニングアクトとして20分弱の演奏する。いつものデュオとはちょっと違って、「歌う」感じの演奏になる。酒游舘は響きがいいので、ついメロディを吹きたくなるせいかもしれない。いつも以上にMegさんのドラムがいい感じで制御されている感じがした。普段より短めの演奏時間ということもあって、寄り道せず、まっすぐに突き進んでいこうという気持ちがお互いにあったのだろう。

AIG

続いてマッシュの演奏。いつものように曲とかテーマ、事前の打ち合わせなど一切無しで始まった。3人のコンビネーションの確かさが伝わってきた。フリージャズの魅力を満載したストレートで爽快な演奏だった。また、さまざまなサウンドシーンが自然な流れでつながっていく感じの約30分のコンパクトなセットだったが、それで十分に満喫できた。グランドピアノで聴く雨宮さんのピアノは骨太でクリア、そして迫力があった。大沼さんのシャープでストレートなドラムは、月並みな言葉で言うならとてもカッコいい。森さんの柔らかく太いアルトの音色は、どんなに激しく吹いても温かみがある。久々にフリージャズの醍醐味を味わえる演奏を聴けた。

MASH1

MASH2

セッション①井上和徳+雨宮拓+Meg Mazaki

ここでは井上さんのテナーの大上段からのパワフルなブロウに説得力があった。

井上+雨宮+Meg

②小松バラバラ+森順治

フリーセッション百戦練磨の森さんと、天然フリークの小松さんのボイスの絡みは興味津々であった。オープンマインドで正対し合ってのデュオだった。小松さんの最近の即興のアプローチに協働性みたいな意識を感じるようになった。

森+小松

③松原臨+大沼志朗+柳川

松原さんの吹奏は、フリークトーンとかに依存せずソプラノサックス本来の音色の美しさを最大限引き出すプレイで、そこには年輪を感じた。特殊奏法とかで奇をてらうプレイヤーとは深みが違う。

しばらくして大沼さんが潔く演奏を終え、その後は森さん、井上さんが加わりサックス四重奏になる。サックス吹きはこうい編成が案外好きである。

(早く打ち上げで酒游舘の地酒を呑みたいという思いからか)だらだらした冗長なセッションにならず、すべてのセットに於いてしまりのある凝集度の高い演奏が繰り広げられた。オトナなのか単なる酒呑みなのか・・・。

松原+柳川+大沼

sax4